一昨日、昨日と工藤さんのことを書いていると
ふと昔が懐かしくなってきました。
昨日2月5日は
将来塾の授業で、『褒めるセミナー』を開催しました。
このセミナーは2005年の4月に
列車の窓から宍道湖に沈む夕日を観ながら
ふと昔を懐かしく想った時に考え付いたものです。
「今はなんでこんなに幸せなんやろ?
昔の自分は
なんであんなにもがき苦しんでいたんやろ?」
そんなことを考えていました。
「あの時、桑島君が一生懸命褒めてくれなかったら
単なる負け犬のままリクルートを去っていたんやろな」と
想うと涙が止まりませんでした。
『人は褒められたように生きられる』
この言葉が突然、私の心に降って来ました。
彼への感謝の気持ちを込めてつくったのが
この『褒めるセミナー』でした。
褒めるセミナーは2005年4月30日に
みんなの前で披露しました。
そして。その次の日に書いたコラムが
『人は褒められたように生きられる』でした。
今日のコラムには
2005年5月1日に書いた
同名のお話を書くことにします。
『人は褒められたように生きられる』
2005年5月1日
「超一流の人ってどんな人?」って問われたら
みなさんは何と答えますか?
勿論 答え(正解)はいくらでもあるでしょうね。
私は何のためらいもなく
「人のいいところだけを見つける人」って言い切ります。
なぜ長所ばかりを見つけられる人が超一流になるのでしょうか?
私にはそう思う3つの理由があります。
① 見つける感性を磨けるから
② 見つけることで真似できるから
③ 見つけて褒めることで仲良くなれるから
短所は努力しなくても見てしまいますが
長所は気をつけていないと分からないままで
過ごしてしまうことが多いです。
真似は大事です。
学ぶとは真似ぶこと。
いいことだけ真似るのがいいですね。
仲良くなれるってとってもいいですね。
モテる人=また会いたいと思わせてくれる人のことです。
褒めるポイントが分かるって、いいですね。
ところで、褒めるって何でしょうか?
「褒める」って
「見つける」ってことなんです。
もしかしたら、その人が気づいていない
とっても素晴らしいところを
見つけてあげて、教えてあげることなんです。
教えてあげて、勇気づけてあげることなんです。
もう20年近く前の話になりますが
私がリクルートで働いていた時の話をします。
私は当時、リクルートブック(現リクナビ)の
営業を担当していました。
1年間 ずっと追いかけていた会社がありました。
やっと 仕事もいただけそうな雰囲気になり
それなりに資料も揃えようと 大阪の調査部に電話をしました。
建築学部の学生の資料を受け取ろうと思いました。
その時、電話に出てくれたのが
桑島さんという新入社員の方でした。
桑島さんはとても丁寧に教えてくれました。
そして、彼がひと言
「柳本さん 僕でよかったら
その会社に同行しますよ」と
「いやーそれは悪いでしょう。
桑島さんもお忙しいでしょうから」
「僕たちの仕事は同行なんですよ。
少しでもお役に立てるなら 嬉しいですから」と。
私は次の週 調査部の桑島さんと一緒に
Kという地元の工務店に行きました。
仕事は1年近くも通ったこともあり すぐに決まりました。
ただ厳しい値引き交渉に入りました。
「なんぼになる?」(K社担当者)
「すみません。値引きはできません」(柳本)
「何を言うとうるんや? 世の中値引きは当たり前や。
広告屋は値引き交渉を受けるもんや。
今まで、値引きなしに 仕事を発注したことなんかあるかい」(K社担当者)
「本当にすみません。値引きせなあかんような
商品を売ってはいませんから」(柳本)
こんな交渉が1時間近く続きました。
私の横で桑島さんも一生懸命
頭を下げながら 「値引きはできません。お願いします」と
言ってくれていました。
実際、値引きは当たり前のように行われていましたし、
営業マンの判断で許される値引きの範囲もありました。
ただ私は値引きまでして、仕事を貰うようなことは
性格上、どうしても出来ませんでした。
それに価格とは お客様と会社が共に利益が上がるよう
設定されたものだと思っていましたからね。
「値引きはしない」 これは自分との約束事でした。
1時間後
担当者の方が「もうええわ」と言いながら
契約書に判を捺してくれました。
「値引きもしてくれへん 営業マンなんか
初めて見たわ」と
ニコニコしながら
言ってくれました。
会社の門を出た後
私は桑島さんと何度も握手をしました。
「ありがとう。桑島さん」
「おめでとう。柳本さん」
会社までの帰り道のこと
「僕ね。初めてですよ。
一切値引きもせずに 受注を頂いた営業マンを見たのは
それに柳本さんって 相手の会社のことも
リクルートのことも 全部考えて仕事してる・・・」
「いやーそんなんちゃうよ。
ただ値引きまでして、仕事を請け負いたくないだけやねん。
将来、独立した時にも同じ気持ちで、仕事したいから
自分との約束を守りたかっただけやから・・・」(柳本)
「柳本さんって、神戸のトップ営業マンなんでしょう?」(桑島さん)
「まさか! 僕、売上全然あかんねん。
いつも最下位争いやねん。
よくて真ん中の下ぐらいやから・・・
全然 営業に向いてないんやと思うわ」(柳本)
「僕ね。この前〇〇支社のトップ営業マンと同行したんですけど
なんか残念に思って、
受注が欲しいだけで、
お金に頭下げる典型の人やったから・・・
柳本さんは 人に感謝することには 深々と頭下げるけど
お金には全然媚ひんし、頭も下げへん。
受注が欲しいとかそんなセコイ考えなんか全然ないし
堂々としてて ホンマにカッコええと思うわ」(桑島さん)
「そんなんちゃうって 全然 あかんねん 僕は・・・」(柳本)
「柳本さん、もしかしたら今、たまたま売上が
あがってないかもしれへんけど
柳本さんって、凄い人になってると思う。
本当にそう思う。
柳本さんも独立しはるんでしょう。
僕も将来、社長になって堂々と生きていきますよ」(桑島さん)
「ありがとう」
私は照れくさそうに答えるのが精一杯でした。
とっても嬉しかった。
この頃、誰からも褒めれることなどなかったですからね。
それから半年ほど経ち
私はリクルートを退社することになりました。
退社の前日
私は一度しか逢ったことのない
桑島さんに電話を入れました。
「桑島さん ごめんな。
あんなに褒めてもろたのに
僕はやっぱり全然あかんかったわ。
ホンマにごめんな。
でも、でも 次の会社では
桑島さんに褒めてもろうたような人間になるわ。
ホンマにありがとう。
あの時、ホンマに嬉しかった」
「柳本さんが 辞めるのは辛いけど
柳本さんは 絶対大丈夫ですよ。
僕が一年間見てきた中で
一番の営業マンやったから・・」
私は泣いていました。
彼の言葉が嬉しかったし、自分の成績が悔しかったし。
その後、次の就職先で
私はダントツの売上をあげる営業マンになっていました。
気がつけば会社全体の売上の約60%は私の売上でした。
人は褒められたように生きられます。
だから だから
本当にいいところを見つけたら
褒めてあげてください。
人は誰でも キラリと光る何かを持っています。
時に
それは何かの理由で
隠れていたり
曇っていたり
しているだけです。
だから
見つけてあげて、褒めてあげてくださいね。
(株)ベンチャーオンライン CEO
桑島一恭(くわしまかずや)氏
彼の会社は今、上場に向かってまっしぐらに進んでいます。
褒めた人がまた更に、光輝くのです。
褒められる人生もステキだけど
それ以上に
人を褒める人生がいいですね。