今日のコミュニケーションの授業は
2006年7月11日に書いた
『時(とき)』のコラムをそのまま転記します。
昨日、友人と話をして
ふと昔のことを語っていました。
中学生のとき
「小説家になりたかった」という話をしていました。
『時(とき)』 2006年7月11日(書)
今日の思いつきコラムは
私が中学2年生の時に書いた
SF小説『時間(とき)』のあらすじから
はじめます。
この小説はある雑誌社に投稿し
見事に没になった作品です。
自分ではとてもデキのいい作品だと
思っていましたが
誰にも相手にされず消えていきました。
30年の月日を経て
せめて、このコラムで
あらすじだけでも紹介させて
やってください。
主人公 時任瞬介 中学2年生(実は私のこと)は
おじさんに小さなラジカセをもらいます。
おじさんは彼にこのラジカセを渡す時
不思議なことを言いました。
「よく聞くんだよ。瞬介。
このラジカセだけど
一度スイッチを入れたら
二度と電源を切ってはいけない。
電池交換の時も電源を切ってはいけない。
絶対だ!
このことだけを守れば
このラジカセがお前やお前の友達を助けることになるから」
おじさんはそのラジカセを瞬介に渡した次の日
交通事故で亡くなります。
電源を切らないのはプレッシャーでした。
電池の残量計がついているから
乾電池の交換の目安は立ちますが
その時は電源コードを用意しないといけないし
音量を最小限に小さくしても
どうしても小さな音は漏れるから
タオルでグルグル巻きにしないといけないし
家に置いておくと 母親がいつ電源を切るかもしれないし・・・
という訳で
彼はいつもこのラジカセを持ち歩いていました。
ある日、ラジカセにスローモードとハイスピードモードが
付いていることに気がつきました。
そのダイアルを回した時
不思議なことが起こります。
スローモードにすると
周りがすべてスローモーションになります。
ハイスピードモードにすると
目にも留まらぬほどの速さで
物事が進みます。
ハイスピードモードは
超加速的に時間が過ぎていくのです。
すべては自分以外に起こる現象です。
彼は当初
いたずらに このモードを使っては
遊んでいました。
ある時、ボールを追いかけていた野球少年が
車に跳ねられそうになりました。
手に持っていたラジカセをスローモードにして
彼はその野球少年を助けました。
おじさんが言っていた
このラジカセが人を助けるものだと知ったのは
その時でした。
それから 彼はことあるごとに
このラジカセのスピードモードを切り替え
友達や自分の周りの人を助けていきました。
ある時はスローモードで
殴り合いのケンカの仲裁に入ったり
幼馴染で近所に住む高校生の女の子が
彼氏にふられ、泣いていた時
「時間が解決してくれるよ」と
言って、ハイスピードで
1ヶ月先に時間を飛ばしてあげました。
そうしたら、その彼女には新しい彼氏ができていました。
瞬介は女心を知り、複雑な心境になっていました。
しかし、それからしばらくして
近所のお風呂屋さんで火災が発生しました。
小さい頃からお世話になっていた
お風呂屋のおばさんが亡くなりました。
スローモーションや時間を進めることは出来るものの
時間を止めることも戻すことも出来ない。
彼はそのことを歯がゆく思っていました。
所詮 自分には人助けなど
出来ないのだと。
おばさんを助けてあがられなかったことに
落胆しきっていました。
そして、次の日の学校帰り、
彼は踏み切りで列車の通過を待っていました。
気がつくと
目の前に 幼い少女がいます。
もう特急列車は目の前です。
スローモードでは間に合いません。
彼は慌てて、電源をオフにしました。
そして、彼は少女を助けました。
次の日 朝刊の社会面に
『ラジカセを握った少年が列車に跳ねられ死亡』と
いう記事が載っていました。
電源をオフにすると
時が止まり
それは死を意味する・・・
瞬介がそのことを知っていたのか
知らなかったのか
今となっては 分かりません。
しかし、彼が時間(とき)と共に
一所懸命生きたことだけは確かでした。
・・・・・『時間(とき)』 あらすじ 完・・・・・
よく思いますよね。
時間が止まったら とか
時間が戻ったら とか
5年前に戻って
あの人に告白したい。
10年前に戻って
あの人に心から謝りたい。
そんなことを
でもね。
時間(とき)は止まったり
戻ったり しないんです。
だからいいんですよね。
もし、時間(とき)が取り戻せるなら
人は『一所懸命』と云う言葉を忘れてしまいます。
時間(とき)は
この大切なことを
私たちに告げているのです。